当院では1996年より手掌多汗症の手術治療として胸腔鏡下交感神経遮断術を行っています。手術治療は最終手段で最も効果がありますが、やはり術後必発する代償性発汗が大きな問題となっています。
そこで当院では、図1に示した日本皮膚科学会より示された手順4を参考に各種保存的加療を行い、それでも困難な場合は手術を行うという流れで進めています。2018年9月よりイオントフォレーシスを導入し、治療の選択の幅を充実させています。時にすぐに手術をして欲しいと受診される方もおられますが、当院倫理規定に従って保存的治療で効果が無い、または満足できない方のみ手術を行っていますのでご了解下さい。
現在、当院にて行っている治療方法
① 内服薬
② 外用剤塗布(単純塗布、密封療法)・・・院内にて調剤しており、院内処方のみで対応しています。
③ イオントフォレーシス(電気治療)2018年9月~導入
まずは当院にて週1~3回程度の治療を実施し、効果を観ていきます。10数回実施して効果が見られない場合は、手術も検討します。また、効果がある場合はこのまま通院してもらうか、機器の個人購入(約3万円~:2020年4月現在)も検討してもらっています。
④ 手術:胸腔鏡下胸部交感神経焼灼切断術
2020年3月までに421件の手術を行っています。当院での手術適応は上記①~③を全て行い、いずれも治療効果が不十分で満足されない場合で、高校卒業見込み以上の方。また、非喫煙者、60歳以下、BMI25以下、心臓・肺の手術や肺炎の既往の無い方が望まれます。幼少時には多汗症を認めず、肥満や甲状腺機能亢進症などに伴って生じた全身多汗症も適応から除かれます。
手術は全身麻酔下で行い、傷は5㎜の創が片側で2箇所、両側で4箇所となります。手術時間は麻酔時間も含めて40~60分程度で1泊2日の入院で済みます。この2年程の手術は代償性発汗を軽減させる様、手術方法を工夫しています。手術直後から効果発現が得られ、手のひら・腋(わき)の発汗量はぐっと減るか、あるいは全く汗をかかなくなります。また、随伴効果として30%前後に足の裏の発汗量が減ることもあります。また、片側(利き手側)の手術後の効果や副作用を確認してから対側の施行を行うことも可能です。
※この手術の最大の問題は手汗が減った分、背中・腰・大腿部の汗が増えるという『代償性発汗』がほとんどの人にみられることです(約8割)。この発汗量の程度・心理的影響も個人差が大きく、殆ど気にならない人から新たな悩みとなる人まで様々です。また、術前に予測することもできませんので、術前に予め保存的治療を行ない、どうしても手術が必要なのかを慎重に検討することを強くお勧めします。術後の満足度については術前発汗が少ない人ほど、低い傾向にありますので、症状の軽い人は注意が必要かと思われます。
※但し、当院では多汗症に対する心理療法やボトックス注(保険適応外)は行っておりません。
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